1992年、ミュンヘン交響楽団との共演でデビュー、ドイツで演奏活動を開始した近藤嘉宏は、帰国後の90年代半ば、映画音楽やポップスを取り込んだ守備範囲の広い演奏で従来のクラシックピアニストの常識を打ち破り、注目を集めました。

近年は、その原点であるクラシックの世界にもどり、2004年にカーネギーホール、2006年にはウィーン・ムジークフェラインでリサイタル・デビューを果たす等、海外でも活躍、今後の更なる飛躍が期待されております。

札幌では、1998年よりほぼ毎年Kitaraホールにてコンサートが開催され、端正で抑制されたピアニズムの内に秘められた音楽への熱い想いと歌心が共感を呼び、幅広い層の支持を得てきました

今回は、ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲録音第５弾として今年3月にリリースされたニューアルバム収録曲であるベートーヴェンのソナタ第８番「悲愴」をはじめ、ショパン、ブラームス、リストと、多彩なピアノ曲の魅力をお楽しみいただきます。

作品を取り上げる以上は自分が心から共感しているものを弾くというのが大原則です。ですが、その酔いしれた熱い気持ちを可能な限り出さないように弾くというのが僕流なんです。音楽の表面ではなく、その内側にある魅力そのものを引き出したいからです。1回限りの演奏をいかに自然に作品のあるべき姿として再現してゆけるかということが最大の課題です。

近藤嘉宏